種別のみ表示幕の謎

(注)以下では簡略化のため「行先・種別表示器(の種別部)」を方向幕、「種別のみ表示器」を種別幕と呼ぶことにする。
電動種別幕の登場

 車両側面における行先、種別案内はサボによって行われてきたが、1962年新製の1000形1101〜1130にネオン管による種別表示器を設けられ、機械化が試みられた。しかし種々の問題から1964年の1131以降は幕式に変更され、現在に通ずる電動幕が登場した。操作は運転室のボタン式指令器によって行われ、無表示および急行、特急、通勤快特、快特の5コマ(順序は不詳)の表示が可能であった。普通および非営業種別の場合は無表示としていた。
方向幕設置に伴う改造

 1973年に470形で側面電動方向幕を採用した実績から、1974年、1000形1049〜1130の更新を機に種別幕から方向幕への置き換えが始まった。しかし続く1000形1130〜1242および1001〜1048では方向幕が各車両片側1ヶ所に削減され、反対側に種別幕が残された。種別幕と方向幕を併設した車両では、操作は北方先頭車に新設された方向幕指令器から一括して行われるようになったため、既存の指令器は撤去された。新設された指令器と方向幕は種別10コマ、行先39コマ分の指令と表示が可能であった。既存の種別幕はこの時普通を含む6コマの表示が可能なように改造されたが、なお指令器の10コマには及ばず、コマ番号を下図のように読み替える機構にして対応した。一方、方向幕の側では複数のコマが種別幕で同じコマ番号に割り当てられたため、種別幕との連携を図るためには10コマ中に6種類の表示しか記載できない制約が生じた。


種別幕の構造(改造後)

 基本的には上下2本の軸で幕を巻き取る一般的な構造だが、モーターと接続されているのは下の軸のみで、上の軸は下の軸とは連動せず、ゼンマイバネで常に幕の上端を引張っているという点がやや簡易的である。バックライトは小径の6W型蛍光灯1本のみである。装着する幕の幅は約23cmで、方向幕には検知穴やバーコードのようなコマ番号の情報は含まれていない。その代わりに位置検出用のカム軸が設けられており、駆動系の軸とギアで接続されている。カム軸は8個のカムからなり、対応する8個のマイクロスイッチを常に押しているが、回転角45°毎に1回、いずれか1つのスイッチを離すようになっている。種別幕の使われ方から8個のスイッチが6コマ+上端、下端の8つの状態にそのまま対応していると思われる。改造前の検知方式は不明だが、登場時期からするとスイッチまたは可変抵抗で回転量を直接検知する方式の可能性が高いと思われる。

他社譲渡車の幕順序

 1988年から後継車両の台頭に伴い1000形の他社譲渡が始まった。1984〜87年の600形譲渡では側面にあった種別幕が撤去されたが、1000形では前側面の各表示器が残され、京急の書式で新調した譲渡先の幕が装着された。この際、方向幕と種別幕のコマ番号の対応関係もそのままであったため、方向幕で同じ種別が現れるパターンが京急と同じとなっている。北総7150形では種別が7種類となり種別幕の容量を超えているが、方向幕上の試運転と回送を種別幕では同じ空白幕に割り当てることで不都合が生じないようになっている。京成1000形の種別幕配列は明らかになっていないが、側面種別幕を活用している写真が記録されていることから、この対応関係を守った配列になっていることが予想される。




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